技術研究組合は他の法人と違って、賦課金(組合員企業からの研究費)収入と国等からの委託費収入・補助金収入で生計を立てています。
国からの収入は原則実費弁償という考え方により、使用した経費に対して事後的に支給されるの
ですが、賦課金収入は年度初めまで(毎年3月末まで)に年度事業計画及び年度収支計画を策定し
主務大臣に提出しなければならないルールになっています。
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技術研究組合法
第二十条(事業計画及び収支予算)
組合は、その成立の日の属する事業年度を除き、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画及び収支予算を作成し、主務大臣に届け出なければならない。
2 組合は、事業計画又は収支予算を変更したときは、変更の日から二週間以内に、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
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そのため、年次計画に基づき賦課金も決定してしまいます。しかし、事業計画通りに研究活動が進まず、予定された経費(機械装置の購入、外注費、労務費など)が予定通り発生しなかった場合、
賦課金収入が残ってしまい、想定外の多額の利益が生じる可能性があります。
利益が残って何が悪いかというと、技術研究組合は法人税の納税義務がない公益法人等とは異なり、税法上は、法人税の納税義務者となります。一定の要件を満たす一般社団法人のように非営利事業部分を、法人税課税の対象外にするといった特段の税法ルールがなく、逃げ場はありません、全ての利益に対してしっかりと法人税課税が生じてしまいます。それでは、技術研究開発のために拠出したはずの資金が、活用されるでもなく税金として社外流出することとなり、極力避けたいところです。
しかし、技術研究組合に生じた剰余金について、技術研究組合法第57条に以下の記載があります。
(剰余金の処理)
第五十七条 組合は、毎事業年度、剰余金を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、翌事業年度に繰り越さなければならない。
目算を見誤って、余ってしまった賦課金は、法人税課税を甘んじて受け、残余利益を翌年に繰り越す選択の一択なのかという疑問が出てきます。
制度設計上、恐らくそのような運用は望ましいものとは思われません。
やはり計画上、必要経費が大きく縮小した場合は、計画及び賦課金を正しいプロセスのもとで、変更し、実態に即した賦課金の徴収(場合によっては返還)が行われるべきと考えます。
そこで、余剰利益となった剰余金を期中返金が可能か、検討してみたいと思います。
①事業計画変更に伴う賦課金の変更は可能か。
以下のようなアプローチで法律解釈を行って問題ないものと考えます。
まず、上述の技術研究組合法 第57条(剰余金の処理)における剰余金の定義を明確にする必要があります。
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剰余金について、
『第56条(会計の原則) 組合の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。』
と述べられており、一般に公正妥当と認められる会計処理基準を準用して良いことがうかがい知れます。
↓
下記、会社法 第446条(剰余金の額)や会社計算規則 第29条(その他利益剰余金の額)を簡単に説明しますと、
剰余金 は、
決算期末における税引き後利益 + 過年度より繰り越してきた未処分利益
と定義付けられます。
↓
今回、計画変更により期中に返金される金銭は上述の剰余金とは異なるものとなります。
↓
従って、期中において賦課金の修正により、組合員に返金する行為は、剰余金の処理(利益処分)には該当しない
と言えます。
また、法人税法上、返金行為が益金の減額ではなく、組合員に対する利益の供与(寄付金課税)に該当するか検討する必要は、監督官庁に計画変更の届出と正式な組合内決議を実施している前提で、まず必要ないように思います。
②返還の前例はあるのか
弊社の事例でいきますと、減額や増額の変更は実例があります。しかし減額による返金の例は今のところありません。実際の減額変更の例では、賦課金を年度中で分割払いする計画だったところ、途中で計画変更となり、減額変更となったため、未払いだった賦課金の支払いを中止するカタチとなりました。
以上となります。
賦課金の減額修正についての考察でした。
—————————<以下、参考条文>——————————–
技術研究組合法
(事業計画及び収支予算)
第二十条 組合は、その成立の日の属する事業年度を除き、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画及び収支予算を作成し、主務大臣に届け出なければならない。
2 組合は、事業計画又は収支予算を変更したときは、変更の日から二週間以内に、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
(決算関係書類等の提出、備置き及び閲覧等)
第三十八条 組合は、主務省令で定めるところにより、各事業年度に係る財産目録、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案又は損失処理案(以下「決算関係書類」という。)及び事業報告書を作成しなければならない。
2 決算関係書類及び事業報告書は、電磁的記録をもつて作成することができる。
3 組合は、決算関係書類を作成した時から十年間、当該決算関係書類を保存しなければならない。
4 第一項の決算関係書類及び事業報告書は、主務省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
5 前項の規定により監事の監査を受けた決算関係書類及び事業報告書は、理事会の承認を受けなければならない。
6 理事は、通常総会の通知に際して、主務省令で定めるところにより、組合員に対し、前項の承認を受けた決算関係書類及び事業報告書(監査報告を含む。)を提供しなければならない。
7 理事は、監事の意見を記載した書面又はこれに記載すべき事項を記録した電磁的記録を添付して決算関係書類及び事業報告書を通常総会に提出し、又は提供し、その承認を求めなければならない。
8 理事は、前項の規定により提出され、又は提供された事業報告書の内容を通常総会に報告しなければならない。
9 組合は、各事業年度に係る決算関係書類及び事業報告書を通常総会の日の二週間前の日から五年間、主たる事務所に備え置かなければならない。
10 組合は、決算関係書類及び事業報告書の写しを、通常総会の日の二週間前の日から三年間、従たる事務所に備え置かなければならない。ただし、決算関係書類及び事業報告書が電磁的記録で作成されている場合であつて、従たる事務所における次項第三号及び第四号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として主務省令で定めるものをとつているときは、この限りでない。
11 組合員及び組合の債権者は、組合に対して、その業務取扱時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該組合の定めた費用を支払わなければならない。
一 決算関係書類及び事業報告書が書面をもつて作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 決算関係書類及び事業報告書が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を主務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて組合の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
(会計帳簿等の作成等)
第三十九条 組合は、主務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2 組合は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
3 組合員は、総組合員の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上の同意を得て、組合に対して、その業務取扱時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を主務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
(会計の原則)
第五十六条 組合の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。
(剰余金の処理)
第五十七条 組合は、毎事業年度、剰余金を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、翌事業年度に繰り越さなければならない。
技術研究組合法施行規則
(純資産又は正味財産の部の区分)
第二十七条 純資産又は正味財産の部は、次に掲げる項目に区分しなければならない。
一 剰余金
二 その他の純資産又は正味財産
(通則)
第三十条 法第三十八条第一項の規定により各事業年度ごとに組合が作成すべき剰余金処分案又は損失処理案については、この款の定めるところによる。
2 当期未処分損益金額が零を超える場合であって、かつ、剰余金の処分がある場合には、次条の規定により剰余金処分案を作成しなければならない。
3 前項以外の場合には、第三十二条の規定により損失処理案を作成しなければならない。
(剰余金処分案の区分)
第三十一条 剰余金処分案は、次に掲げる項目に区分して表示しなければならない。
一 当期未処分剰余金又は当期未処理損失金
二 次期繰越剰余金
三 前各号に属さない事項がある場合、その内容を適切に示す項目
会社法
(剰余金の額)
第四百四十六条 株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
一 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 資産の額
ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
ハ 負債の額
ニ 資本金及び準備金の額の合計額
ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
二 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を控除して得た額
三 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(次条第一項第二号の額を除く。)
四 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(第四百四十八条第一項第二号の額を除く。)
五 最終事業年度の末日後に第百七十八条第一項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
六 最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における次に掲げる額の合計額
イ 第四百五十四条第一項第一号の配当財産の帳簿価額の総額(同条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く。)
ロ 第四百五十四条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額
ハ 第四百五十六条に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額
七 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
会社計算規則
(その他利益剰余金の額)
第二十九条 株式会社のその他利益剰余金の額は、第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が増加するものとする。
一 法第四百四十八条の規定により準備金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(利益準備金に係る額に限り、同項第二号に規定する場合にあっては、当該額から利益準備金についての同号の額を減じて得た額)に相当する額
二 当期純利益金額が生じた場合 当該当期純利益金額
三 前二号に掲げるもののほか、その他利益剰余金の額を増加すべき場合 その他利益剰余金の額を増加する額として適切な額
2 株式会社のその他利益剰余金の額は、次項、前三款及び第四節に定めるところのほか、次の各号に掲げる場合に限り、当該各号に定める額が減少するものとする。
一 法第四百五十条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額
二 法第四百五十一条の規定により剰余金の額を減少する場合 同条第一項第一号の額(その他利益剰余金に係る額に限る。)に相当する額
三 当期純損失金額が生じた場合 当該当期純損失金額
四 前三号に掲げるもののほか、その他利益剰余金の額を減少すべき場合 その他利益剰余金の額を減少する額として適切な額