政府は、1月7日、一都三県に二度目の緊急事態宣言を発出し、その後、地方でも感染が拡大したことから、1月13日に、大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、栃木、福岡の7府県についても緊急事態宣言を発出しました。

今回の緊急事態宣言は、飲食店の時短要請を中心としたゆるやかな制限であったため、1か月では「ステージ3」相当にもっていくのは難しいと見られていましたが、案の定、栃木を除き緊急事態宣言を3月7日まで延長することになりました。緊急事態宣言の延長を受けて、Go Toトラベルと外国人の新規入国の停止も延長されることになります。

新規感染者数は減少傾向にはありますが、首都圏では依然として医療体制のひっ迫が続いています。そこで、今回は、緊急事態宣言発出後の感染者の状況、特措法改正の内容、経済対策の最新情報などについてまとめました。

1)緊急事態宣延長の内容

【対象地域】
栃木は、2月7日で緊急事態宣言が解除され、以下の10都府県が延長となりました。

東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県(1月8日〜)
大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、福岡(1月14日〜)

【終了予定日】
3月7日(状況が改善した地域は前倒しで解除)

【制限の内容】
一都三県の知事からは、延長するなら「より強い措置」が求められていましたが、政府は、休業要請などのより強い措置は行わず、ゆるやかな制限を継続することにしました。ただ、都道府県間の不要不急の移動は極力控えることと、昼間についても不要不急の外出は控えることが追加されました。制限の内容は以下のとおりです。

①飲食店について午後8時までの時間短縮要請(酒類の提供は午前11時〜午後7時)
②テレワークによる出勤の7割削減
③午後8時以降の外出は控えること
④イベントの人数制限(5000人以下かつ収容率50%以下)
⑤【追加】都道府県の間の不要不急の移動を極力控えること
⑥【追加】昼間についても不要不急の外出自粛

【解除基準】
「ステージ4」からの脱却(変更なし)

ステージ3 ステージ4 東京
病床使用率(%)
全入院者
20 50 59.7
病床使用率(%)
重症者
20 50 107.4
療養者数(人)
人口10万人あたり
15 25 70.8
直近1週間陽性者数(人)
人口10万人あたり
15 25 33.25

東京の数値:厚生労働省「都道府県の医療提供体制等の状況」2021年2月5日時点

東京では、直近1週間の陽性者数はかなり減ってきましたが、療養者数、病床使用率は依然として高く、いずれもステージ4の基準を上回っている状況です。

2)緊急事態宣言後の感染者の状況

緊急事態宣言発出後の1月10日からの週単位の新規陽性者数を見ると、次のグラフのとおり、どの都府県も感染者数は減少しています。

緊急事態宣言後の感染者の状況

新規陽性者数(1週間単位の推移)

新規陽性者数(1週間単位の推移)

「緊急事態宣言」というアナウンスメント効果と夜間の飲食制限による人の接触機会の減少が影響していることは確かだと思いますが、行動変容の効果は2週間後から表れると言われていますので、12月28日から停止になったGo Toキャンペーンの停止も大きく影響していると考えられます。12月28日の2週間後である1月11日からGo To停止の効果が出始めることになるからです。

また、首都圏の保健所では業務が膨大になっており、マンパワーが不足していることから、かつては調べていた積極的疫学調査(濃厚接触者の特定作業)を今はほとんどしていません。そのため、陽性の可能性がある人への検査が減っているという事情があります。これは、市中には、無症状感染者が以前より多く潜んでいる可能性があるということです。

いずれにせよ、陽性率は下がってきていますので、ここで気を緩めることなく、感染の拡大をくい止める行動が引き続き求められます。間違っても、緊急事態宣言解除と共にGo Toキャンペーンが再開させるようなことはあってはならないと思います。しっかりと感染が抑え込めていない段階でGo Toを再開すれば、再び感染が拡大するおそれがあるからです。

3)特措法、感染症法等の改正

3)特措法、感染症法等の改正

緊急事態宣言の実効性を確保するために、特措法、感染症法、検疫法の改正案が国会に提出され、2月3日に参院本会議を通過し、法案は成立しました。10日の周知期間を経て、2月13日に施行されます。主な改正点は次の通りです。

1.新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部改正(新型コロナウイルス特措法)

①まん延防止等重点措置の創設

感染のまん延を防止するため、営業時間の変更などの要請や要請に応じない場合の命令についての規定が創設されました。新型コロナウイルスの場合、「ステージ3相当」の状態が想定されています。これによって、命令に違反した場合についは事業者に過料を科すことができるようになりました。

②臨時の医療施設の開設時期の変更

緊急事態宣言中に開設できるとされている「臨時の医療施設」について、政府対策本部が設置された段階から開設できるようになりました。

③施設の使用制限の強化
緊急事態宣言中の施設の使用制限等の要請に応じない場合に命令できること、また、命令に違反した場合には過料を科すことができるようになりました。

④事業者及び地方公共団体に対する支援の明確化

「国及び地方公共団体は、事業者に対する支援に必要な財政上の措置、医療機関及び医療関係者に対する支援等を講ずるものとする。」との規定が追加されました。また、「国は、地方公共団体の施策を支援するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。」との規定も追加されています。

⑤差別防止への責任の明確化

感染症に罹患した人や医療従事者などに対する差別を防止することについて、国及び地方公共団体に責任があることを明確化しました。

⑥有識者会議の位置づけの明確化

これまでも、政治判断をするにあたって専門家の意見を取り入れてきましたが、政府と有識者会議との関係がはっきりとしていませんでした。今回の改正で「新型インフルエンザ等対策推進会議」を内閣に置くことが規定され、明確化されました。

2.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部改正(感染症法、検疫法)

①新型コロナウイルスの位置づけの明確化

新型コロナウイルス感染症を「新型インフルエンザ等感染症」として位置付け、この感染症に係る措置を感染症法で講ずることができることを明確化しました。

②国や地方自治体間の情報連携の強化

保健所を設置している市や区から都道府県知事への発生届の報告・積極的疫学調査結果の通報を義務化し、電磁的方法の活用をすることを規定しました。

③宿泊療養・自宅療養の法的位置付けの明確化

新型インフルエンザ等感染症のうち厚生労働大臣が定めるものについては、宿泊療養・自宅療養の協力要請について規定を新設しました。また、検疫法上も、宿泊療養・自宅待機その他の感染防止に必要な協力要請ができる規定を創設しました。

④入院勧告・措置の見直し

新型インフルエンザ等感染症のうち厚生労働大臣が定めるものについて、入院措置に応じない場合、または、入院先から逃げた場合には過料を科すことが規定されました。

⑤積極的疫学調査の実効性確保

新型インフルエンザ等感染症の患者が質問に対して正当な理由がなく答えない場合、虚偽の答えをした場合、正当な理由がなく調査を拒み、妨げるなど忌避した場合には、過料を科すことが規定されました。

⑥患者受入れの協力要請の強化

緊急時、医療関係者・検査機関に協力を求めることができ、正当な理由なく応じなかったときは勧告することができます。勧告に従わない場合、公表することができるようになりました。

新型コロナウイルスに関する行政罰についてまとめると次のようになります。
○ 入院を拒否した場合 → 50万円以下の過料
○ 調査を拒否した場合 → 30万円以下の過料
○ 時短・休業要請を拒否した場合(緊急事態宣言時)→ 30万円以下の過料
○ 時短要請を拒否した場合(まん延防止等重点措置)→ 20万円以下の過料

4)経済支援の内容

1月8日からスタートした緊急事態宣言では、午後8時までの時短営業に応じた飲食店については、1店舗あたり1日6万円の協力金が支払われるというものでした。この措置は、3月7日まで延長されることになりました。

また、1月14日からは、①飲食店と直接・間接の取引がある業者や不要不急の外出・移動の自粛による直接的な影響を受けた業者などへの一時金について法人は40万円以内、個人事業者等は20万円以内の額が支給されています。これが、今回の延長後は、法人は60万円以内、個人事業者は30万円以内に引き上げられます。

緊急事態宣言前からあった以下の措置は、終了したものと延長したものがあります。
○持続化給付金(2021年1月15日まで)→ 延長(2021年2月15日まで)
○家賃支援給付金(2021年1月15日まで)→ 延長(2021年2月15日まで)
○雇用調整助成金(2021年2月28日まで)→ 延長(緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで)
○確定申告期限(2021年3月15まで)→ 延長(2021年4月15まで)
○実質無利子・無担保融資(2021年前半まで)→ 変わらず
○国税・地方税・社会保険料の納付猶予(2021年2月1日まで)→ 終了
○固定資産税・都市計画税の減免(2021年2月1日まで)→ 終了