相談事例

LLP設立前のQ&A(相談事例)
弊社で対応させていただいた「LLP設立前の相談」の一部をご紹介します。
LLP(有限責任事業組合の相談事例
設立計画の概要
(設立の目的)
外国人で東京に来る方に、多言語で今の東京を紹介するウェブサイトの運営 特長は、東京在住の外国人がライティングした記事を掲載することです。
また、言葉使いはカジュアルな話し言葉で親しみやすい文体です。
下記の業務を継続するLLPを設立したいと思います。

・ウェブサイトの開発・運営
・スマートフォン用アプリソフトウェア開発
・外国人向け物販
・広告事業

(シェアオフィスの建設)
組合員予定のAさんが実家の土地に、2016年中に、 組合員予定のさんが個人でシェアオフィスを建築する予定です。
LLPが土地と建物をそれぞれAさん、Bさんより賃貸する予定です。
住所(組合所在地):東京都世田谷区〇〇〇〇〇

(組合員)
組合員は下記の4者とする予定です。

・Aさん
アプリケーションソフト開発技術者

・Bさん
ウェブデザイナー

・Cさん
旅行代理店経営

・Dさん(アメリカ人)
雑誌編集者

(設立予定日)

2015年10月1日

(存続期間)

2015年10月1日から2045年9月30日までの30年間 ただし、組合員全員の同意を得た場合には存続期間を変更することができる

(決算期間)

10月1日~9月30日

(出資金予定)

・Aさん       500,000  5%
・Bさん       500,000  5%
・Cさん      8,500,000  85%
・Dさん       500,000  5%
合計          10,000,000

(損益分配割合)

利益分配 損失分配
・Aさん        20%   5%
・Bさん        20%   5%
・Cさん         40%   85%
・Dさん         20%   5%

利益分配は、貢献度を基準にして設定
損失分配は、資金余力がCさんにしかないため出資比率と同じ。

Q&A集
シェアオフィスについて
Q.1


組合員であるBさんが個人で建築した施設をLLPに賃貸するのはokですか?

A.1


問題ございません

Q.2


建築費用2000万円の施設をLLPに月10万円で貸すのは妥当ですか?

A.2


近隣エリアにおける、事業用物件の賃貸相場に照らして、大きく逸脱していなければ、特段問題ございません。

Q.3


存続期間中の建物補修はLLPの費用でokですか?

A.3


建物の用途が、LLP事業専用でしたら、全額LLPの費用としてOKです。
もし、プライベートな部分や他の企業の事業等を兼ねている場合は、応分
の費用按分が必要となります。

Q.4


追加で内装・外装をLLPで負担し建築することはokですか?

A.4


問題ございません。

Q.5


AさんよりLLPが土地を賃貸するのはokですか?

A.5


問題ございません。

Q.6


地代月5万円は妥当ですか?(農地転用で固定資産税は上がる)

A.6


上記同様に、近隣エリアにおける地代相場に照らして、大きく逸脱していなければ、特段問題ございません。

組合員について
Q.7


Bさんが組合員であることで税務上何か面倒なことが発生しますか?

A.7


特段ございません。

決算期間について
Q.8


決算日を1月末にした場合、決算に関する届け出は翌年の1月31日までに行えばいいと本に書いてありましたが実際について教えてください

A.8


ご指摘の通り、有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)を翌年1月31日までに、LLPの所在地を所轄する税務署へ提出します。

出資金について
Q.9


出資金割合によりCさんは連結決算対象となる可能性がありますか?
また、その場合に回避することはできますか?

A.9


連結決算は、一般的には株式公開会社又は上場準備会社において、留意すべき事項となります。もし該当する場合は、一度担当監査法人にご確認下さい。
また、上記にかかわらず、LLPはそのB/SとP/Lを決算のタイミングで、組合員(出資企業)に対して合算(ある意味、連結)することとなりますので、子会社の連結決算といった特段の会計処理を行わずとも、出資元企業の単独財務諸表に取り込まれることとなります。
従いまして回避ということは出来ないとお考えください。
むしろCさんの会社の適正決算という見地からは、決算期末をCさんの会社とLLPを合わせるようにした方が宜しいかと思います。
弊社が担当しています上場会社の組成するLLPは、その主たる組合員企業の決算月にLLPの決算を必ず合わせています。
※全て3月決算です。

Q.10


毎月会員が運営会費を払う場合、その会費は出資金となりますか。

A.10


出資金又はLLPの収入となります。

Q.11


Cさん20万円、Aさん、Bさんともに5万円、Dさん0円はokですか?

A.11


自由自治の範疇と考えられます。すなわちOKです。

Q.12


現組合員による出資金の追加と持ち分変更は年度単位で可能ですか?

A.12


追加出資は可能です。(任意のタイミングで可能です。)
持ち分の変更とは、出資割合の変更でしょうか?これは税務上、無償の利益移転とみなされますので、難しいです。
持ち分とは、出資割合のこととなりますので、実際に拠出された金額により、算出される割合となります。

Q.13


出資金がマイナスとなった場合はどうなりますか?

A.13


その時点でいずれかの組合員企業が、資金貸付を行っている状態と考えられます。
最終的に回収が出来ないようであれば、どこかの時点でその貸付金を追加出資に振替えることで、出資がマイナス(債務超過)の状態を解消することになるかと思います。

損益分配について
Q.14


利益の分配と損失の分配を分けましたが、分配比率は妥当ですか?

A.14


分配割合の妥当性を考える際は、まず恣意性が介在するか否かにより変わります。
恣意性が介在しない間柄の中で決定された損益割合は、極論問題は生じません。
恣意性が介在(ご家族、同族会社とその経営者など)する場合は、その共同事業に対する貢献度合いを総合勘案し、合理性があればOKとなります。

Q.15


分配比率を年度ごとに変更することは可能ですか?その手続きは?

A.15


年度毎の変更可能です。手続きとしましては、『組合員の損益分配の割合に関する書面』を作成し、組合員が合意したことを表するために捺印して頂きます。
[参考URL] https://llp.ne.jp/pdf/llp_flow.pdf

内部取引について
Q.16


事業が自立するまでLLPにCさんが収益の支援をする方法について?

A.16


まず営利組織(株式会社やLLPなど)が他社の支援のために行う行為は、例外を除き、寄付行為(寄付金課税の対象)となります。

Q.16-①


月に約20万円ほど必要となる見込みです

A.16-①


実際支援(寄付)を行う側の法人が、寄付金課税(費用の損金否認)を受けないためには、その金銭拠出が、その法人の営利追求のための行為であるという大義名分が必要です。

Q.16-②


下記の妥当性もしくは良い方法を教えてください

A.16-②


以上を踏まえまして、CさんがLLPへ資金拠出することは、Cさんの営利活動であることが前提となります。その前提が崩れた場合は、前述の寄付金課税の問題やCさん個人に対するCさんからの役員賞与認定リスクに繋がります。

Q.16-③


→LLP運営会費として出資金負担

A.16-③


出資金として、拠出する場合は、その拠出金額に応じてその後のリターン(損益分配割合)に反映することが、合理性を持つために必須と思います。

Q.16-④


→LLP施設利用料として損金負担

A.16-④


Cさんが、LLP施設を事業のため利用するという場合でしたら、その便益に相応する対価を負担しても問題ございません。

人件費について
Q.17


組合員企業の従業員が出向でLLPのお手伝いをした場合どうなりますか?

A.17


企業がグループ会社へ社員を出向させる場合と同等とお考えください。

Q.17-①


→設定支援など一時的な場合
→受付業務担当など固定的な場合

A.17-①


一時的、固定的を問わず、労務提供の対価として、相応の金額を組合員企業からLLPへ請求を行い、LLPが支払うのが、宜しいかと思います。もちろんLLPで人を雇うことも出来ますので、LLPとして、出向者へ給与支給することも可能です。

Q.18


LLPの費用とさせないこともできますか?

A.18


可能です。
LLPの組合員は共同で事業を行い、その成果を組合員で分配するのが、原則的な考え方です。すなわち、かかった費用を前取りするのではなく、最終的に獲得した利益を各組合員で適正に分配するというのが基本型です。
言い換えると、出向でLLPのお手伝いをした貢献度合いが、しっかりと損益分配割合に反映していることが重要と言えます。

リースについて
Q.19


組合員名義でパソコンなどをリースした場合、組合員側の会計処理は?

A.19


リース会計はその処理方法がいろいろとありますが、一般的なリース費用として経費処理しているようでしたら、同額をLLPに負担させ、リース費用を相殺する方法が考えられます。また、LLPが費用負担しない場合は、上述の人件費の考え方と同じことですので、そのLLPが享受する経済的利益を損益分配割合に反映させることで、組合員企業側でリース費用を単純に損金処理したとしても、税務上認められることとなります。

販売管理費について
Q.20


組合員がLLPの案件で使用した車両燃料費などはLLPの経費にできますか?

A.20


はい、出来ます。

Q.21


上記の場合の留意点を教えてください

A.21


合理性をもって、請求して頂ければ問題はございません。請求の様式を用意し、計算根拠を残すようにした方が良いと思います。

会員企業の仕訳について
Q.22


総額法と純額法があるようですが、純額法で問題ありませんか?

A.22


出資割合と損益分配割合が異なるLLPに関して、

組合員がサラリーマン等個人の場合、問題ありませんが、消費税の納税義務者となる個人事業主や法人については、適正な会計処理は出来ません。従いまして、純額法ではなく総額法又は折衷法の採用が必要となります。

折衷法とは、B/Sは純額法とし、P/Lを総額法として、会計処理を組合員企業側で取り込む方法のことです。弊社では、出資割合と損益分配割合が一致しないLLPについては、この折衷法による会計処理をお願いしています。
※総額法はその表記が困難なことから、弊社では行っていません。

消費税の税務申告を行うためには、仮受消費税、仮払消費税さらに課税売上に非課税売上など詳細区分が不可欠です。LLPからの損益分配に関して、純額法を採用することで、その利益分配の金額のみを、例えば課税売上とすれば良いというルールは存在しません。
すなわち、各組合員について、自社に帰属する応分の売上、仕入れ、経費、資産購入等に係る消費税を正確に認識するためには、分配損益の中身を展開させる必要があるということです。

Q.23


その場合下記仕訳でokですか?(Cさんを例)

A.23


各仕訳ごとに下記に回答します。

1.最初の出資: 出資金 850/現金  850 LLP出資金 850 / 現金 850
2.毎月の会費: 出資金  20/現金   20 上記 Q.15『組合員の損益分配の割合に関する書面』には、出資割合を記載する部分があります。
もし毎月追加出資とすると、毎月この書式を改定することとなり、煩雑で現実的ではありません。
そのため、出資金とする場合は、期中仮払金処理とし、LLPの決算期末に出資金として、認識させるような実務的会計処理が望ましいと思います。

仮払金 20 / 現金 20

3.LLP決算: 出資金  10/営業外利益10(利益分配の場合) <12ヶ月(会費20)があったと仮定>
LLP出資金 240 / 仮払金 240  ※20×12ヶ月分
未収入金 10 / 営業外利益 10 ※純額法とした場合
4.入金:    現金   10/出資金  10 現金 10 /  未収入金 10
5.LLP決算: 営業外損失10/出資金  10(損失分配の場合) 左記仕訳の通りです。  ※純額法とした場合
上記の仕訳4においてLLPで留保する場合のC社の仕訳はどうなりますか? 仕訳はありません。すなわち、LLPに対する債権(未収入金)が残ります。
(下記再出資が妥当ですか?)
分配金再出資: 出資金   10/現金  10 LLPに対する債権(未収入金)を再出資するか否かは、組合員とLLPの判断事項です。

出資金 / 未収入金(又は現金) 10

税務について
Q.24


会員企業Cさんの会社についての税務上の懸念事項はありますか?
また、回避方法などあれば教えてください。

A.24


上記ご質問の中で、税務上の留意点をご説明しました。これらのポイントに留意して頂ければと思います。

1. Cさんの会社が行う行為が、Cさんの会社の収益追求に帰すること

2. 組合員とLLP間の取引については、それぞれを独立した商人とした際、成立する取引か否か、若しくは、LLPに対して無償又は低額で提供した便益があったならば、その便益部分が、損益分配割合に反映しているか否か

というところに、税務上の留意点及び回避のポイントがあります。