特別家賃支援給付金の申請がはじまりましたが、どんな人が対象になるのか、自宅オフィスでも可能なのかよく分からず、申請に戸惑う人も多いようです。そこで今回は、申請はいつからで、自宅オフィスでも可能か、どういった申請の方法なのかなど、法人と個人事業者に分けてかんたんに解説します。

1)そもそも特別家賃支援給付金とは?

家賃支援給付金とは新型コロナウイルスの影響により、事業収入が減少した中小企業の事業者を下支えし、地代・家賃負担を軽減するために、中小企業庁が行う給付金のことです。令和2年度第2次補正予算の成立で給付が決定し、予算総額は2兆242億円です。

特別家賃支援給付金の申請はいつからいつまで?

2020年7月15日から申請がはじまりました。2021年1月15日まで申請が可能です。

特別家賃支援給付金の対象となる事業者は?

中小企業庁が行う給付金のため、中小企業が対象です。具体的には資本金10億円未満、または常時使用する従業員の数が2,000人以下の中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業主などが給付対象となっています。

具体的には医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象となります。個人事業者は、フリーランスを含み、幅広く対象となります。

特別家賃支援給付金を給付できる条件は?

まずは、つぎの2つ①と②のどちらも満たしている必要があります。

① 2019年12月31日以前から売上があり、今後も事業を継続する意思があること
② 賃料の支払いをおこなっていること。

②を詳しく解説すると、他人の土地や建物を自身で営む事業のために直接占有し、使用して収益を得ていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていることです。

①と②を満たしたうえで、2020年5月から2020年12月までの間で、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、以下のいずれかにあてはまることが条件です。

① いずれか1か月の売上が前年の同じ月と比較して50%以上減っている
② 連続する3か月の売上の合計が前年の同じ期間の売上の合計と比較して30%以上減っている

【①の例】 2020年5月の売上が、前年の同じ月(2019年5月)の売上と比較して50%以上減っている。

2019年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
売上
(万円)
39 45 50 55 60 57 48 44 42 48 40 46

 

2020年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
売上
(万円)
39 45 50 32 27 30 28

 
2019年5月には60万円あった売上が、2020年5月には27万円に減少しています。50%以上の減少のため、給付対象となります。
 
【②の例】2020年5月から7月までの売上の合計が、前年の同じ期間 (2019年5月から7月まで)の売上の合計と比較して30%以上減っている。
 

2019年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
売上
(万円)
39 45 50 55 60 57 48 44 42 48 40 46

 

2020年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
売上
(万円)
39 45 50 53 41 38 32

 
2019年5~7月の合計額は165万円だったのに対し、2020年5~7月は111万円でした。33%の売上減となり、30%以上減少しているため、給付対象となります。

特別家賃支援給付金の給付対象外でも例外はあるの?

2020年7月17日現在、2019年(令和元年)の確定申告をしていない方は対象外となっています。売上がなく確定申告をしていなかったり、2020年1~3月に創業した方、主たる収入を雑所得や給与所得などで確定申告した個人事業者などは対象外です。

また、災害などの罹災により2019年の収入が2018年よりも低く、罹災証明を持っている方なども現在は対象外となっています。

しかし、中小企業庁では給付できるよう検討しているようですので、該当される方は対象外と諦めず、続報を待ちましょう。

注意!特別家賃支援給付金は持続化給付金とは違う‼

特別家賃支援給付金は、中小企業庁が行う給付金で、経済産業省が行う持続化給付金とは違います。そのため、申請も別々にする必要があります。持続化給付金の申請の際に使用した書類やデータが自動で流用されることはありませんので、持続化給付金を申請した方も、特別家賃支援給付金を受けたい場合には別途申請をする必要があります。

また、3か月の売上合計も条件に入ることや、算定の基礎となる月が申請日の前月など、持続化給付金とは異なる点もありますので、注意しましょう。

2)特別家賃支援給付金【法人の場合】算定金額、申請に必要な書類までどこよりも詳しく

小見出し①特別家賃支援給付金はいくらもらえるの?

給付額は、月額上限を100万円とした、6か月分の賃料です。
具体的には、申請日の直前1か月以内に支払った賃料の3分の2を6倍した金額となります。持続化給付金のように対象月を選べるわけではありませんので、注意が必要です。

また、賃料のほかにも管理費や共益費なども含まれます。

支払賃料(月額) 給付額
75万円以下 支払賃料(月額)×2/3×6倍
75万円超 [75万円以下の支払賃料などに相当する給付金(50万円)]×6倍
+[支払賃料の75万円の超過分×1/3]×6倍
※ 月額上限100万円

 
【算定例】75万円以下の場合

8月10日に申請を行うとすると、7月11日~8月10日の間に支払った賃料が対象となります。たとえば7月25日に支払った賃料が20万円だった場合。

給付額=50万円×2/3×6=80万円

【算定例】75万円超の場合

8月10日に申請を行うとすると、7月11日~8月10日の間に支払った賃料が対象となります。たとえば7月25日に支払った賃料が90万円だった場合。

75万円以下の分=75万円×2/3×6=300万円
75万円を超える分=90万円-75万円×1/3×6=30万円

給付額=300万円+30万円=330万円

※ 複数月分の賃料をまとめて支払っている場合には、申請日の直前の支払いを1か月分に平均した金額が算定の基礎となります。

特別家賃支援給付金に必要な書類は?

法人の場合、特別家賃支援給付金に必要な書類はつぎの8つです。それぞれスキャンしたり、スマホやデジカメで撮影したものを、PDF・JPG・JPEG・PNGで1ファイル10MB以下の容量で保存したものをアップロードします。

・自署の誓約書
・2019年分の確定申告書別表一の控え
・法人事業概況説明書の控え
・受信通知(※e-Taxにて申告をおこなっている場合のみ)
・申請にもちいる売上が減った月・期間の売上台帳など
・賃貸借契約書の写し
・直前3か月間の賃料の支払実績を証明する書類
・給付金の振込先がわかる口座情報

※ 各書類は1書類につき1ファイルまで添付できます。書類が複数ページにわたる場合は、全ページを1つのPDFファイルに出力してアップロードしましょう。

3)特別家賃支援給付金【個人事業者の場合】条件から算定金額、申請に必要な書類までどこよりも詳しく

特別家賃支援給付金はいくらもらえるの?

給付額は、月額上限を50万円とし最大300万円までの、6か月分の賃料です。
具体的には、申請日の直前1か月以内に支払った賃料の3分の2を6倍した金額となります。持続化給付金のように対象月を選べるわけではありませんので、注意が必要です。

また、賃料のほかにも管理費や共益費なども含まれます。

支払賃料(月額) 給付額
37.5万円以下 支払賃料(月額)×2/3×6倍
75万円超 [37.5万円以下の支払賃料などに相当する給付金(20万円)]×6倍
+[支払賃料の37.5万円の超過分×1/3]×6倍
※ 月額上限50万円

 
【算定例】37.5万円以下の場合

8月10日に申請を行うとすると、7月11日~8月10日の間に支払った賃料が対象となります。たとえば7月25日に支払った賃料が10万円だった場合。

給付額=10万円×2/3×6=40万円

【算定例】37.5万円超の場合

8月10日に申請を行うとすると、7月11日~8月10日の間に支払った賃料が対象となります。たとえば7月25日に支払った賃料が40万円だった場合。

37.5万円以下の分=37.5万円×2/3×6=150万円
37.5万円を超える分=45万円-37.5万円×1/3×6=15万円

給付額=150万円+15万円=165万円

※ 複数月分の賃料をまとめて支払っている場合には、申請日の直前の支払いを1か月分に平均した金額が算定の基礎となります。

【ポイント】大家さんが家賃を値下げしてくれてたり、免除してくれた場合は?

借りている物件によっては、新型コロナウイルスの影響を考えて、大家さんが賃料を値下げしてくれていたり、免除してくれている場合もあります。その場合は、値下げ期間中に申請を行う必要はありません。2020年12月31日までに賃料が元の水準に戻った時点で申請を行うことが可能です。
【ポイント】SOHOで自宅兼オフィスの場合は?

SOHOで自宅兼オフィスの場合も対象となります。ただし、確定申告書における損金計上額など、事業に関する金額が基準額となります。

【算定例】5万円の場合

家賃が10万円の自宅をオフィスとして使用し、2分の1の5万円を損金計上額として申請していた場合は、5万円が基準額です。

給付額=5万円×2/3×6=20万円

特別家賃支援給付金に必要な書類は?

個人事業者の場合、特別家賃支援給付金に必要な書類はつぎの9つです。それぞれスキャンしたり、スマホやデジカメで撮影したものを、PDF・JPG・JPEG・PNGで1ファイル10MB以下の容量で保存したものをアップロードします。

・自署の誓約書
・2019年分の確定申告書別表一の控え
・所得税青色申告決算書の控え(青色申告の場合のみ)
・受信通知(※e-Taxにて申告をおこなっている場合のみ)
・申請にもちいる売上が減った月・期間の売上台帳など
・賃貸借契約書の写し
・直前3か月間の賃料の支払実績を証明する書類
・給付金の振込先がわかる口座情報
・本人確認書類の写し

※ 各書類は1書類につき1ファイルまで添付できます。書類が複数ページにわたる場合は、全ページを1つのPDFファイルに出力してアップロードしましょう。

【ポイント】白色申告の場合はどうしたらいいの?

確定申告を白色申告している方は、「所得税青色申告決算書の控え」がないため、添付の必要はありません。確定申告に関係する書類は、「2019年分の確定申告書別表一の控え」と受信通知となります。

4)特別家賃支援給付金の申請方法は?

特別家賃支援給付金の申請方法は、公式サイトからの電子申請が基本となり、郵送での申請は受付ていません。

中小企業庁の特別家賃支援給付金公式サイト
https://yachin-shien.go.jp/index.html

(※ システムメンテナンスのため、午前2時~午前3時は申請できません。)

また、持続化給付金と同じように申請サポート会場が全国に設けられており、公式サイトで近くの会場を探すことができます。例外に該当するかどうか分からなかったり、書類に不安がある場合などサポートを受けましょう。

特別家賃支援給付金の問い合わせ先は?

特別家賃支援給付金の相談や問い合わせ先は、こちらです。

中小企業庁の特別家賃支援給付金電話窓口
0120-653-930
受付時間:8:30〜19:00 (土日・祝日含む)

6)まとめ 万全に準備して特別家賃支援給付金を申請しましょう

特別家賃支援給付金についてどこよりも詳しく、かんたんに解説しました。万全に必要書類を準備して、特別家賃支援給付金を申請することが大切です。そして少しでも給付金を得ることで、事業継続へとつなげましょう。