日本版LLP(有限責任事業組合)と暖簾わけ

昨日はFCビジネスとの相性というテーマでしたが、今日は暖簾わけにLLPが利用できるか考えたいと思います。具体化した方がイメージしやすので、ケーススタディとします。

ラーメン店経営 株式会社A社 創業30年の老舗
社 長 Bさん 
本 店 東京都中野区
直営店 1都3県に10店舗

●ラーメン店に入社してくる社員は独立心が旺盛。
●優秀な社員には直営店店長を任せているが、優秀な社員ほど、独立のため辞めていく。
●FC展開は現在考えていない。
●社長のBさんは、優秀な社員の流出を何とか食い止めたいと考えている。

社内の役員会議にて、優秀な人材流出の防止策として必要な要件は

★自分の努力がダイレクトに報われる仕組み
★経営に関する自由裁量を持たせる
★A社がバックアップすることにより、完全に独立した場合より成功する確率を高め、事業リスクを低下させる。

以上のような要素を持った制度を検討することとなりました。

さて、日本版LLPを活用できるか考えてみたいと思います。
A社と社員Xさん(優秀な社員で、独立志向が強い)が、新店舗出店に際して、LLPを組成することとします。

■社名:麺麺LLP(正式名称:麺麺有限責任事業組合)

■組合員:A社
    Xさん(業務執行組合員)

■出資金:A社2,000万円(出店コスト1500万円+人件費500万円負担)
    Xさん500万円(主に運営費に充当)

■給与保証: Xさん 30万円/月

■食材等仕入: 原則A社より仕入れる(A社マージンは10%)

■損益分配:

各自出資金相当額に達するまで A社80% Xさん20%
各自出資金相当額に達した後(すなわち、2,500万円分配後)  

――営業利益1000万円まで   A社50% Xさん50%
――営業利益1000-2000万円まで A社25% Xさん75%
――営業利益2000万円超    A社10% Xさん90%

(※すなわち、Xさんは保証給与+分配金)

■追加出資:A社のみ500万円を上限に追加出資可能(A社の判断)
      Xさん不可
(※有限責任、組合財産に対する強制執行等の禁止というLLP制度の特典を活かすことも考えられるが、
Xさんが個人的に多重債務に苦しむ状況になり、債権者がXさんを操ってLLPの経営に口出し等してくる可能性など考えられるかな?と思い、あえてXさんの追加出資を不可としました。)

■LLP自体の借入れ:認めない。

■組合員の加入:新たな組合員の加入は認めない

■契約解消(解散):XさんによるLLPの経営が行き詰った場合、LLPを解消し、A社が店舗を継承し、運営を継続するか、閉鎖するか決定する。
 (※解消に伴い、残余財産が残れば、出資割合に応じて、Xさんに金銭で分配)

■副業・多店舗化:Xさんの権利として、他の事業を行ったり、他のLLP店舗の経営を行うことが可能。

詳細条件の設定が甘いと思いますが、なんとなく”有り”ではないでしょうか?A社がLLPを活用するメリットとしては、

1.Xさんに擬似的な暖簾わけによる独立(支援付き)を認めることができる。
2.FC店や、完全な暖簾わけと異なり、直営店に準じた統制が期待できる。
3.構成員課税により、LLPにて課税を受けず、A社に損益が取り込める。
4.損益分配を柔軟に設定することができる。
5.LLPが、店舗賃貸、什器リース等契約当事者となることができる。など

恐らく、優秀な人材は直営店店長にしておきたい社長と、経験を積んで独立したい優秀な社員の間を取り持つ方策として、LLPによる「擬似的な暖簾わけ」というのは、”有り”かなと思います。皆さんどう思いますか?