登記の効用―日本版LLP(有限責任事業組合)

こんばんは、今日は登記の話です。といっても登記手続きは専門ではありませんので、日本版LLPが登記対象となっていることの効用について触れたいと思います。

任意組合や匿名組合は、登記をする必要がありませんでした。というより登記ができませんでした。この登記が出来ないということが、何を意味するのか?? 

十分な法的知識(普通なそんなもの持ち合わせていない!)なく、組織を構築すると、任意組合なのか匿名組合なのか、はたまた人格のない社団等(※1)なのか訳のわかんない組織を作ってしまう可能性があります。組織を作った側が、任意組合のつもりでも、税務調査で匿名組合の認定を受けたり、人格のない社団とみなされると...どうなるのでしょ??

(※1)人格のない社団等

法人税法第2条(定義)第八号
法人でない社団又は財団で代表者又は管理者の定めがあるものをいう

法人税基本通達1-1-1(法人でない社団の範囲)
「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。(昭56年直法2-16「二」、「六」により改正)
(1) 民法第667条《組合契約》の規定による組合 
(2) 商法第535条《匿名組合契約》の規定による匿名組合 

税務署も商売(語弊は承知の助!)なので、悪意の有無に関わらず、税金の取れる部分を見つけ出してチャレンジをしてきます。どのようなチャレンジをしてくるのかというと、組合区分毎に異なる税務処理の相違点を突いてきます。1つ例をあげると、組合区分により消費税の納税義務者が異なってくるため、任意組合のつもりで、各構成員が分配された金額に応じて消費税の申告をしていたところ、匿名組合だと言われて、その構成員の中の1人が”匿名組合の営業者”とみなされると、事業全体について消費税申告義務が生じ、納税漏れとなってしまうのです...なんてことがありえます。

消費税基本通達

1 -3-1(共同事業に係る消費税の納税義務) 

共同事業(人格のない社団等又は匿名組合が行う事業を除く。以下1-3-1及び9-1-28において同じ。)に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、当該共同事業の構成員が、当該共同事業の持分の割合又は利益の分配割合に対応する部分につき、それぞれ資産の譲渡等又は課税仕入れ等を行ったことになるのであるから留意する。 

1 -3-2(匿名組合に係る消費税の納税義務)

匿名組合の事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、商法第535条《匿名組合契約》に規定する営業者が単独で行ったことになるのであるから留意する。 

また上述の人格のない社団等は、なんと法人税の課税対象となっています。

法人税法第3条

人格のない社団等は、法人とみなして、この法律(別表第二を除く。)の規定を適用する。

ということで、登記義務がないということは、コストがかからないと喜ぶことではなく、その立場が法的に守られていないことを意味するのだと思います。

従って、日本版LLPが登記できるということは、制度発展のためにとても重要なことだと言えますよネ!?

日本版LLP法

第八条(登記)

この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。

2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。