こんばんは
これを読むと誰もLLPを作らなくなるのでは・・・と思いつつ。
個人が事業を行い報酬をもらう際、一定の所得には支払者側で源泉所得税について徴収義務が生じます。具体的には、
原稿料、デザイン報酬、講演謝金、経営指導コンサル報酬、TV等への出演料、専門能力を要する計画・研究・設計・分析・試験・評価及びその指導などに対する報酬
のようなものが対象となります。大企業ではその判別が不明確なため個人への報酬支払いは一律10%源泉徴収している場合なども見受けられます。
さて、LLPと何の関係があるかというと、LLPがセミナーで講演した場合、仮にLLPの構成員が個人であったなら、その個人の収益分配割合に応じた源泉所得税をセミナー主催者は天引き徴収した上で、LLPに支払いなさいという取扱いになる模様です。
(条文根拠は所得税基本通達204-1)
***********************************************
[例]
LLPの構成員:4名(法人A、法人B、個人C、個人D)
個人A:出資割合25% 損益分配割合50%
個人B:出資割合25% 損益分配割合10%
法人C:出資割合25% 損益分配割合30%
法人D:出資割合25% 損益分配割合10%
10日間の講演会でギャラ300万円+消費税15万円を請求したとしましょう。請求書上次のように記載する必要が出てきます。
請求金額 300万円
源泉所得税 △ 23万円
消費税 15万円
———————-
お支払金額 292万円
======================
※1源泉所得税の内訳(100万円まで10%、それ以上は20%)
個人A:損益分配割合50%につき、300X50%=150
(150-100)X20%+100X10%=20
個人B:損益分配割合10%につき、300X10%=30
30X10%=3
法人C:損益分配割合30% ※法人につき源泉徴収不要
法人D:損益分配割合10% ※法人につき源泉徴収不要
なお、本年12月末までの個人組合員に帰属する報酬源泉
につき、報酬の支払調書を交付して頂きます様お願い申し
上げます。記載事項は以下通りです。
(※仮に本年のお支払いが今回のみと仮定致します)
——————*——————*
東京都港区○○1-2-3
☆☆☆有限責任事業組合
組合員 個人A
支払額 150 源泉徴収額 20 (別途、消費税額7.5)
——————*——————*
——————*——————*
東京都港区○○1-2-3
☆☆☆有限責任事業組合
組合員 個人B
支払額 30 源泉徴収額 3 (別途、消費税額1.5)
——————*——————*
***********************************************
会社でいうと、自社の株主構成とその持分割合を請求書
に明記するようなものです。おかしいですよね~
さらに実務上大きな問題は、以前のブログでも触れたことがありますが、仮に単年度損益が赤字の場合、損益(損失)分配割合は出資割合を適用することを私は推奨しています。(理由は今回割愛します)
そうすると、決算時に赤字になったとすると、源泉徴収されたときの報酬(利益が出る前提で分配割合を提示)と、実際の分配割合がことなる結果となります。結局個人の確定申告で精算されるのでいいんじゃないと言われればそれまでですが。。。
いずれにしましても、LLPというものを日本で普及させていく気が経済産業省にあるなら、運用実務面の不都合を解消すべく国税庁へ働きかけるべきではないでしょうか?それとも法律を成立させたことで大満足なのでしょうか?