日本版LLP(有限責任事業組合)と所得区分!?

こんにちは、梅雨の晴れ間いかがお過ごしですか?今日はLLPに個人が出資して組合員となった場合の話題です。

有限責任事業組合の組合員は、その組合から分配される(課税前)損益を受け入れて、法人であれば法人税、個人であれば所得税の確定申告を行うことになる、というところまでは良いと思いますが、個人組合員の場合は、その分配の受け方を選択できるというお話です。

法人の場合は、収入金額についてその収入がどのような収入なのか区分を問われることはないのですが、個人の場合はその収入金額を所得区分に分けることを検討する必要があります。

参考とすべき任意組合の取扱いが、所得税基本通達に明記されています。
所得区分という観点で要約すると次のようになります。①が原則で、②③も認めるという内容になっています。

 ① 収入、費用、資産、負債等全てを個別に分配割合で掛け算した金額を取り込む。
 ② 収入、費用等を個別に分配割合で掛け算した金額を取り込む。

 以上、①②は、収入の所得区分に応じて、所得税計算を行う。

 ③ 組合損益(=収入―費用)に分配割合で掛け算した金額を取り込む。

 ③は、損益の分配のため、所得区分を認識できず、その損益を組合の主たる事業の所得区分として、所得税計算を行う。

結果同じでは?と思われる方もいると思いますが、これが違うのです。所得税は今後大きく変わろうとしていますが、現行所得区分は10コに分かれています。

利子所得
配当所得
不動産所得
事業所得
給与所得
譲渡所得
一時所得
雑所得
山林所得
退職所得

違いを全て挙げるのは大変なので、分かりやすい例を一つ紹介しておきます。

(例示)
組合名義の定期預金 5000万円(国内の銀行)
当期の預金利息    50万円(源泉税20%控除後)
事業種目 コンサルティング業(主たる事業の区分:事業所得)
事業収入      2050万円(上記預金利息を含む)
事業支出      2000万円

<Aさん部分のみ>
Aさんの分配割合    50%
当期の預金利息    25万円(源泉税20%控除後)
事業収入      1025万円(上記預金利息を含む)
事業支出      1000万円
分配損益      25万円(2050万円-2000万円)X50%

上記①②の場合

事業所得 (1025万円―25万円)―1000万円=ゼロ
利子所得 25万円(日本国内の預金により源泉徴収後金額)
     国内預金利息は申告不要 ∴ゼロ

上記③の場合

事業所得 1025万円―1000万円=25万円

となり、上記③の場合のみ最終的に所得税の課税所得が25万円生じる結果となります。個人組合員がいる場合、組合員への組合損益レポートは少し難しいと思います。税金計算を行うのは組合員側ですが、必要なデータをレポートするのは、組合側なので、法人税・所得税両方を考慮した決算レポートを作成しないと混乱してしまうと思います。

余談ですが、私自身も某投資事業組合(株式投資ファンド)の決算レポートを見て、税務処理を行うのにとても苦労しました。。。上記の区分の問題と、もう一つ事業所得or雑所得による税務処理の相違点が苦労した元凶でした。その話題はまた今度~!

所得税基本通達

36・37共-20(任意組合の事業に係る利益等の額の計算)

36・37共-19により任意組合の組合員の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する利益の額又は損失の額は、次の(1)の方法により計算する。ただし、その者が継続して次の(2)又は(3)の方法により計算している場合には、その計算を認めるものとする。

(1) 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等を、組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定による損益分配の割合(以下この項において「分配割合」という。)に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法

(2) 当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない。 

(3) 当該組合について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員にあん分する方法
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について、非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はなく、各組合員にあん分される利益の額又は損失の額は、当該組合の主たる事業の内容に従い、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得のいずれか一の所得に係る収入金額又は必要経費とする。