日本版LLP(有限責任事業組合)と個人構成員の給与(その5)

【5】前回で終わりでは...書き忘れがあったので、延長戦突入です。

給与所得と事業所得の違いによって、こんな影響も生じる可能性があるっていうお話です。

例)
耗駄目駄有限責任事業組合 出資金額100万円
(組合員Aさん 50万円 組合員Bさん 50万円)

設立初年度 赤字1000万円 (取引先への負債[買掛金の支払い代金]1000万円)

業務執行組合員Aさんへの支払い(労働対価として)(第1期中) 750万円
その他社員・アルバイトへの人件費 2000万円

と、このような場合を考えてみたいと思います。

下記日本版LLP法の35条と36条から、仮にAさんが受け取った750万円全額が事業所得(損益の分配)とみなされると、大変です。

初年度欠損金 赤字1000万円―出資金額100万円=欠損額900万円(債務超過状態)

となり、分配額750万円<欠損額900万円 ∴負債1000万円のうち、750万円分につき、連帯債務者となります。

750万円とはいえ、既に生活費として大部分が消えてなくなっていることでしょうから、これはきついと思います。逆に、他の社員やアルバイト同様に労務対価として給与所得扱いとなれば、連帯債務を負う必要がなくなります。

従って、税務上微妙な問題ではあるのですが、事業所得とならないように、形式を整え金額の多寡も検討した上で、給与を支給することがと~ても重要だと思います。だって、これじゃ~、有限責任と言えなくなりますよね?!

日本版LLP法

第35条(財産分配に関する責任)

分配した組合財産の帳簿価額(以下この条及び次条において「分配額」という。)がその分配の日における分配可能額を超える場合には、当該分配を受けた組合員は、組合に対し、連帯して、分配額に相当する金銭を支払う義務を負う。

2 前項に規定する場合において、当該分配を受けた組合員は、分配額が分配可能額を超過した額(同項の義務を履行した額を除く。)を限度として、連帯して、組合の債務を弁済する責任を負う。

第36条(欠損が生じた場合の責任)

組合員が組合財産の分配を受けた場合において、当該分配を受けた日の属する事業年度の末日に欠損額(貸借対照表上の負債の額が資産の額を上回る場合において、当該負債の額から当該資産の額を控除して得た額をいう。以下この条において同じ。)が生じたときは、当該分配を受けた組合員は、組合に対し、連帯して、当該欠損額(当該欠損額が分配額を超えるときは、当該分配額。次項において同じ。)を支払う義務を負う。ただし、組合員が組合財産を分配するについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

2 前項の規定により組合員が組合に対して欠損額を支払う義務を負う場合において、当該分配を受けた組合員は、当該欠損額(同校の義務を履行した額を除く。)を限度として、連帯して、組合の債務を弁済する責任を負う。